日本最大級のリーチを誇るプロゲーミングストリーマー集団「父ノ背中」。数々の大会で優勝を重ねるなど、輝かしい実績を誇る強豪プロチームの副リーダーを務める傍ら、YouTube上では多彩な動画でファンを虜にするけんきさんへのインタビューを実施。けんきさんにとって「父ノ背中」とは何か、そしてプロゲーマーとしての哲学を聞いた。

プレイヤーネームの「けんき」は本名。

―― 最初に「けんき」というプレイヤーネームの由来について教えていただけますか。

けんき:なにか面白い由来があるわけではなく、本名が「けんき」なので、そこからですね。最初にFPSを始めたときはふざけた感じの別の名前を使っていたこともありましたけど、ある程度上手くなって人に見られる機会が増えてからは本名でいいやとなりましたね(笑)。

―― FPSを始められたころは、どんなゲームをプレイされてましたか?

けんき:実は、子供のころからずっとFPSを遊んでました。最初に出会ったのが、Nintendo64の『ゴールデンアイ 007』です。このゲームでFPSの魅力を知ってからは、『サドンアタック(SUDDEN ATTACK)』『AVA(Alliance of Valiant Arms)』といった基本プレイ無料のFPSもプレイしました。特に、『AVA』は2年近く熱中した思い出深いタイトルの1つです。

―― 幼少のころからFPS一筋はまさにホンモノ。しかも、『ゴールデンアイ 007』はRare社の名作の1つとして、今なお声が上がるタイトルですよね。現在はどういったゲームをメインでプレイされているんでしょうか。

けんき:YouTubeでは『レインボーシックス シージ』や『PUBG(PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS)』を主にプレイしていますが、中でもメインと言えるのは『レインボーシックス シージ』です。『PUBG』は解説とか番組のMCなどでサポートとして携わっています。

―― FPSと聞くと、「銃撃戦で敵をすばやくやっつける」だけのイメージを持つ方もいますが、『レインボーシックス』シリーズでは、作戦というか戦術が勝負を分けるFPSだと思いますが、プレイする上でこだわっている点はありますか?

けんき:そうですね。『レインボーシックス シージ』は数あるFPSの中でもコア向けの作品と言われていて、ゲーム内で実に様々な出来事が起こります。スコアもいろいろ設定されているので、単純なドンパチだけではなく、この点をどう読み取っていくか、相手がどう読んでいるかを感じ取ることが不可欠です。言い方を変えると、どうやって相手を騙せるかとも言えますね。

―― 戦術が問われるこのタイトルでは、事前に考えた作戦を遂行するタイプ、直感で動くタイプに大別できると思いますが、けんきさんのプレイスタイルはどちらになりますか。

けんき:この2つのどちらかというと、後者の直感で動くタイプですね。僕はあまりエイム力に自信がなくて、それを補うためにどうしてもトリッキーなプレイングが必要になります。不意をついたときや驚かせたときは相手の反射神経が鈍るので、その瞬間だけは僕が最強のはずです。自分のポテンシャルを最大限引き出すのではなく、相手のポテンシャルをまったく発揮させない状態で殲滅するのを信条としています。

―― 相手のポテンシャルを発揮させないように立ち回るというのは納得です。とはいえ、相手の術中にハマってしまうケースもあるかと思います。そんなときはどう対処しますか?

けんき:究極的には、心理戦というか、読み合いですね。また、どの階層まで相手がこちらを読んでいるかによって対処法は変わってきます。このゲームにはセオリーというものがたくさんありますが、セオリーはトレンドによって積み重なって絶えず変化していきます。たとえば、最初はルート10m走っただけでも、相手が仕掛けられるタイミングとかポイントがたくさんあります。肝心なのは、この動きを察知して相手のトレンドを掴んだ上で対応することです。こういったことは、ラウンドを通しての分析が重要になってきます。

―― ラウンドを通した分析の他に、トレンドを把握するためにけんきさんが日ごろから気を配っていることはありますか?

けんき:ふと思ったこと、疑問に思ったことを迷わず試すことですね。たとえば、ポジショニングです。普通に考えたら相手から丸見えのところも、丸見えだからこそ誰も注意してなくて、安全に行動できることだってあります。視覚的ではなく、意識外の死角になっていると思ったら、それは必ず試すようにしていますね。もちろん、単純にどこを通るのか、どのタイミングで飛び出したら相手は驚くだろうかなども細かくチェックして、最適な行動を見つけ出しています。

使用するデバイスにも経験を経た上でのこだわりが。

―― 一方で、エイムもそうですが、トリッキーなプレイングを確実なものにするためには、デバイスも重要だと思いますが。

けんき:そうですね。以前は無線マウスを使っていましたが、現在は有線マウスに変わりました。かつての無線マウスは遅延の問題がつきまといましたが、テクノロジーの進化もあってその点はクリアしました。コードレスなのも大きい魅力の1つですね。ただ、無線マウスは「重さ」の問題があって、これが思った以上にしんどくてプレイに影響があると思ったので今は有線に落ち着いてます。

―― FPSで外せないデバイスと言うと、マウスに加えてキーボードもありますね。

けんき:もちろん、キーボードにもこだわりはあります(※けんきさんの愛用のデバイスは父ノ背中ホームページで公開中)。重要なのは、自分自身がいかに慣れ、使いこなしていくかという点だと思います。

―― 冒頭で『PUBG』では、解説や番組MCとしての活動がメインとおっしゃってましたが、プレイヤーではなくストリーマーとして気をつけていることはありますか?

けんき:視聴者の立場になって「なにが面白いんだろう」と定期的に自問自答することを忘れないようにしています。僕はプレイヤーではありますが、クリエイターではないので「クリエイターの真似事」しかできないと思っています。常に視聴者がなにを求めているかを考え続けないと、魅力的なコンテンツを提供できなくなってしまいます。

―― ストリーマーを名乗る人たちが増え続けている現在、視聴者の立場を第一に考えることはとても重要な視点だと思います。ただ、ストリーマーは時として自分自身を演出することもあるかと思います。1人の演者として、自分をどのように確立していったのですか。

けんき:演者としての自分は、プライドを捨てることが第一ですね。たとえば、Twitterではなにかに怒ったりすることもありますが、実はそこまで本気でキレてないんです。動画でも大声で叫んだり、笑ったりしますが、それは僕ではなく「けんき」というキャラクターが笑っているイメージです。ここにプライドが入ってしまうと、恥ずかしいとか、よく見られたい、叩かれたくないといった感情がノイズになってしまいます。何事も「なりきること」が必要で、中途半端だと誰も熱狂してくれないし、ファンはついてきてくれないと思ってます。YouTubeの「けんき」と、Twitterの「けんき」では、コミュニケーションの仕方も少し異なっています。YouTubeはチャンネル登録をされていない方も動画を見ていますのでより幅広い層にむけたコミュニケーションをこころかげています。逆に、Twitterは、「けんき」をフォローしてくれているファン向けのコミュニケーションをとる必要があるので、考えや主張を打ち出し、より深い「けんき」のファンになってもらうようにしています。

―― 精鋭ぞろいの父ノ背中のメンバーになったきっかけは?

けんき:僕は設立メンバーの1人なんですが、元々は『レインボーシックス シージ』のクランを別に作ってました。設立のきっかけは、当時の日本1位、2位、3位のメンバーで新しいチームを構成したら相当強いんじゃないかという、単純な発想で結成したのが発端です(笑)。僕自身、当時はYouTubeでの動画再生数が伸び始めた時期で、伸ばし方のセオリーというものも自分なりにわかってきたタイミングでもありました。であれば、スター選手を集めてチームを作ったらビジネスとして発展して、好きなゲームを長く続けられると考えたのも結成した理由の1つですね。

父ノ背中の設立時にリーダー、サブリーダーの役割を作った事は、円滑な運営を意識し、且つファンへの気配りも忘れなかった

―― 「好きなゲームを長く続けていける」というのは、ゲーマーならではのモチベーションですね。父ノ背中では、けんきさんはサブリーダーというポジションですが、どういった経緯でこの座に就くことになったのですか?

けんき:父ノ背中を設立するとき、多くのメンバーは2位と3位のチームから加入することになったんです。この2位のチームは僕が所属していたチームです。3位のチームは現リーダーである、てるしゃんのチームでした。僕たちは合併という思いでチームを始めたかったので、新しいチームを円滑に運営をしていくために、父ノ背中でもリーダー、副リーダーの役割を持つことにしたのです。そうしないと、合併ではなく、吸収というイメージが付いてしまいますからね。

―― ファンを意識した細やかな気配りの1つですね。サブリーダーならではの仕事はどういったことですか。

けんき:スポンサー様とのやりとりは僕とてるしゃんの2人が中心にやっていますが、てるしゃんは北海道に住んでいることもあって、なかなか東京に来ることができません。企業に直接ご挨拶したり、お打ち合わせをする場合は僕が対応しています。

―― リーダーのてるしゃん氏は、けんきさんにとってどういう存在ですか?

けんき:人徳者というイメージですね。父ノ背中は組織として、幕末に活躍した「新選組」に近い印象を僕は持っています。新選組で言う、近藤勇がてるしゃんだと思います。とにかく、求心力が強い方ですね。それを象徴するエピソードがあって、父ノ背中の下部組織「HOME」がオフ会をしたことがあるんですが、50~60人もの方々が集まってくれました。これだけの人数がいても、てるしゃんの前に全員が並んで乾杯するのを目の当たりにしたときは、驚きましたね。しかも彼は、参加者全員のことをしっかりと覚えていて「最近どうだった?」とか、一人ひとりと会話するのを見て、そういう資質を持っている人なんだと感心しました。これこそがリーダーを務めている、務まる所以だと思います。

―― 他のチームメンバーで、特に一目置いている人はいますか?

けんき:僕が統括しているメンバーが4人いて、「ニート部隊」と呼んでいます。この「ニート部隊」のApple、あどみん、きんち、abitunに関しては信頼していますし、期待もしています。ここからさらに1人を選ぶのであれば、Appleは自分にとって大きな財産だと思っています。彼は不器用というか、タレント業に不向きなタイプではあるんですが、チーム内でナンバー2のチャンネル登録者数(15万人以上)を誇っています。これはなぜか考えたことがあるんですが、僕が言ったスケジュールを1日も休まず遂行してくれることが数字に現れているんだと思ってます。自分で言うのもなんですが、僕のスケジュールはかなり厳しく、それを100%達成できる愚直さという部分において、彼を上回るメンバーはなかなか出てこないと思います。

―― けんきさんがプロを意識し始めたのは、こういった優秀なメンバーの影響が大きいのでしょうか。

けんき:実はプロゲーマーになることにあまりこだわりはなくて、単純にゲームを長い時間プレイしたいという思いからでした。学生のころは長時間遊べても、社会人になるとなかなか時間が取れませんよね。それがすごく嫌だったんです。もっというと、一緒にプレイしてくれる仲間との時間が失われるのも嫌で、チームと一緒にずっとプレイする方法はないかと考えた結果、プロゲーマーに行き着いたんです。だからプロゲーマーが目標だったというより、目標地点のチェックポイントにたまたまあったという感覚です。

―― プロゲーマーとしての1日のタイムスケジュールをお聞かせいただけますか? どれくらいの時間を練習に割いているのでしょうか。

けんき:昼の12時から16時が父ノ背中の練習時間になっています。それが終わるとマンションに備え付けのジムに行って体を動かしますね。もう25歳なんで、健康にも気を使わないとまずいと思って(笑)。ジムでの運動が終わったら、部屋に戻って配信を始めて、大体ノンストップで深夜3時ぐらいまで続けますね。そこまでやって就寝というのが一番真面目なときの1日です。

―― なかなか密度の濃い過ごし方ですね。健康に気を使っているとコメントいただきましたが、その間の食事ってどうされてますか?

けんき:ジムでのトレーニング後にしっかり食べるようにしています。最近、特に気を配っているのは朝食です。うちのメンバーには食事が面倒で体調不良を起こす者もいて、COMPという完全食を導入してみたんです。その流れで僕自身も食べるようになりましたね。人間ドックにも定期的に行ったり、健康にはかなり気を使っています。

プロゲーマーはファンにとっても憧れの存在であるべきと考えるけんきさん。ファンと同じ方向を見ることも大事だと語ってくれた笑顔が印象的。

―― プロになって、ファンとのコミュニケーションという点ではいかがですか?

けんき:基本的にファンとのコミュニケーションは、どんどん遠ざけていくイメージで活動しています。というのも、今のプロゲーマーのポジションってまだまだ低いところにあって、それをどんどん上に上げていかないといけないと思っています。その過程で自分自身が偶像的なものになっていくのだと、そう思っています。ファンの方々にとっては身近な存在ではなく、遠いところにいる憧れの存在であるべきだと思ってます。これはファンをないがしろにしているわけではないです。ファンの方々と同じ方向を見ることもすごく大事だと考えていて、そのためのコミュニケーションも怠らないようにしています。

―― 最後に、今後の目標や将来の夢などをお聞かせください。

けんき:メンバーとずっとゲームをしていたい思いは、今も今後も変わりません。「ずっと」というのは極端な話、30年後でも、老人ホームに通いながらでも、命あるまで「ずっと」という意味です。これを実現するためにはそれなりの経済的基盤が必要なのはわかっているので、そうなれるようにプロゲーマーとしての活動を続けていきます。ここでいう経済的基盤がどのくらいなのかを自分なりに想像すると、オフ会で東京ドームが埋まるくらいかなと。これを本当に成し遂げれば、僕だけじゃなくメンバー全員が幸せな状態になれると思います。東京ドームでのオフ会は、5年後くらいの目標です。2018年の目標でいうと、Twitterのフォロワーを20~30万人にしたいのと、TV番組に出演する足がかりを作っていきたいですね!

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